「お父さん、あれが欲しい。」
「あれが欲しいのかい?」
「そう、あれが欲しい。1回、頂戴。ひとつくれたら
今度は自分であれ、ひとつ下さいって言えるし、
それをお父さんにあげる」
「わかった、じゃあひとつとってきてあげよう」
「わーい」
「ほら、とってきたよ。お前にあげるよ」
「どこにあるの。私には見えない。」
「そうなのかい?お前は少し目が悪くなっているのかな」
「もういっかいとってきて」
「わかった、もう一度とってきてあげよう」
「わーい」
「ほら、どうだい、さっきのより大きいから見えるだろう」
「なあにこれ。私が欲しい形をしていない」
「そうなのかい?よく見てご覧、同じものだよ」
「こんなのいらない、もういっかいとってきて」
「そう何度もとってこれるものじゃないんだよ、
お父さん、力がなくなってお前をだっこできなくなるよ」
「そしたら自分で歩くからはやくとってきて」
「わかった、これで最後だよ」
「わーい」
「ほら、どうだい、見えない?」
「ほら、どうだい、聞こえない?」
「ほら、どうだい、感じない?」
「ほら、どうだい、気づかない?」
「あれ、お父さん、どうしたの。鼻がなくなってるよ」
「あれ、お父さん、どうしたの。耳がなくなってるよ」
「あれ、お父さん、どうしたの。目がなくなってるよ」
「あれ、お父さん、どこ行ったの。人差し指が落ちている」
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